超塑性現象の探求

 超塑性とは,硬くて脆いはずのセラミックスがまるでチューインガムのように延びる現象です.セラミックスを自由自在に変形して複雑形状部品に加工できる超塑性現象は,セラミックスの製造技術を根本から変革する可能性を秘めています.
 私たちはこれまでにジルコニア(ZrO2),窒化ケイ素(Si3N4),炭化ケイ素(SiC),複合化材料,バイオセラミックスの超塑性化に成功し,現在はこれらのセラミックス材料を微細結晶化することにより,更なる延性の向上や変形の高速化を目指しています.

焼結現象の解明

 焼結とは,粉体の集合体を融点よりも低い温度で加熱することで粉体が固まって緻密化する現象を指し,セラミックス部品はこの焼結技術により製造されます.
 この焼結現象の解明は,複雑形状の加工や均質な部材の製造等,未だ多くの課題を抱えるセラミックス産業の発展に重要な役割を果たすといえます.私たちはこの焼結現象を高温変形とみなし,結晶粒界の動力学や材料内部を非破壊で観察することのできる3次元トモグラフィ法などの新しい解析技術を駆使して,焼結現象の科学的解明を目指しています.

微小試験による機械的特性評価

 材料の機械的特性は化学組成・結晶構造だけでなく,ミクロスケール・ナノスケール領域の構造制御によって大きく影響されます.近年,ITや医療分野において使用機器の微小化が進む中で,その機械的特性を評価するマイクロサイズ試験法の研究が進められてきました.
 私たちは通常の1000分の1サイズのマイクロカンチレバー試験を用いて機械的特性の評価を行い,割れにくさの指標である靭性を向上させるメカニズムを解明するとともに,新たな高靱性セラミックスを開発することを目指しています.

セラミックス材料の繊維強化

 セラミックスは,高温,高応力,耐腐食性など,金属では耐えることが困難な厳しい環境下で利用できる構造材料として期待されています.一方で,典型的なセラミックスは,高硬度を有しますが脆いという欠点があります.本研究室では,この脆さを克服するためにカーボンファイバーを利用した繊維強化複合セラミックスの材料設計・破壊挙動の研究に取り組んでいます.

エンジニアリングセラミックスコーティング

 セラミックス部材の超高温環境下での長時間使用を可能にする方法として,酸素・水蒸気の拡散を抑制する耐環境コーティング“EBC(Environmental Barrier Coating)”があります。本研究室では,このEBCを構成するセラミックス材料の力学的特性値を実験により求め,各層に発生する応力をシミュレーション解析することにより,最適な材料設計を目指しています.