AFM(原子間力顕微鏡)

著者: 武田 悠二郎、修士課程1年生(2003年度)

1. どんな装置ですか? 何がわかりますか?

 先端の尖った針(カンチレバー)を試料表面上で走査して表面の形状を調べるSTM(Scanning Tunneling Microscope: 走査トンネル顕微鏡)は、1981年にIBM研究所のBiningとRohrerらによって開発されました。STMは試料と探針間のトンネル電流を検出することで表面の構造を原子レベルの分解能で観察します。当時は普遍性のある表面の観察手段が無かったため、STMの登場は衝撃的でした。1986年にこの研究に対しBining、Rohrerらにノーベル物理学賞が与えられています。

 しかし、STMは導電性の試料しか観察出来ないため、1986年にBinning, Quate, Gerberにより絶縁体でも測定できるAFM(Atomic Force Microscope: 原子間力顕微鏡)が考案されました。AFMは走査プローブ顕微鏡の一種で、先端を尖らせた針を膜の表面上で走査して、針が感じる原子間力を電気信号に変える事で表面の形状を観察します。これらSTMやAFMは、近接場顕微鏡(SNOM)などと併せてSPM(Scanning Probe Microscope: 走査プローブ顕微鏡)と呼ばれており、用途に応じて様々な研究に使われています。

AFM装置の全体像(測定中は振動を防ぐため、除振台に載っています。)

 

2. どんな原理で測定できるのですか?

 まず、カンチレバーと呼ばれる窒化シリコン(Si3N4)の探針がついたものの背面にレーザーを当てます。カンチレバーの背面には金箔が付いており、これにレーザー光を当てることで反射させて、4分割フォトダイオードを用いたPSD (Position Sensitive Detector: 光変位検出器、入射光により生じた光電流を対に置かれた電極に流すことで位置を電圧に変換する)で検出することにより、カンチレバーが試料との相互作用によりどれだけたわんだのかを検出します。

カンチレバーのたわみの検出系。4象限検出型のPSDでは、各領域の光強度を電圧に変換し、それぞれの電圧差が0Vになるようにすることで、反射レーザー光位置とPSD中心を精度良く合わせることができます。

 

3. AFMの特長

 

4. 測定例

 YSZ基板上にエピタキシャル成長したZnO薄膜のAFM像