電気特性評価装置

著者: 田嶋 健太郎、修士課程1年生(2005年度)

1. どんな装置ですか? 何がわかりますか?

インピーダンスアナライザ

 インピーダンスとは、回路に交流電流を流した時の抵抗成分を複素数で表示したものです。交流回路で注意すべき点は、直流では回路素子を「点」で存在するだけとしてもかまわない場合が多いのですが、交流では回路全体に無視できない容量、抵抗成分が分布しているとして考えないといけない状況が多く起こります。また、インピーダンスは電源の周波数によっても変化します。インピーダンスアナライザは、ある周波数の交流電流を回路に入力したときの出力の振幅と位相を測定することで、回路のインピーダンスを決定します。

 回路に交流電流を加えると、交流波が回路内部で複雑に反射します。このとき、回路内部で干渉が起こるため、回路毎のインピーダンスをうまく設定しないと、入力した信号がうまく出力側から出てきません。特に数GHz帯のような高周波領域でこの現象が顕著になります。このため、回路設計において、デバイスのインピーダンスの測定・制御が重要になります。所望の回路特性を引き出すために、回路にどのような素子を繋げたらよいのかを考える場合、スミスチャートを使用してインピーダンスマッチングを行う必要があります。

 実際の測定をする際には、「校正(キャリブレーション)」というものを行う必要があります。これは、ケーブルの終端にある特定の抵抗値を持った装置を繋げ、オープン、ショート、ロード補正という3種類の補正を行うことにより、測定機、測定回路系の補正を行います。なぜこのような校正を行うのかといえば、高周波(GHz帯)領域では、交流波の波長は僅か数cmしかありません。このため、ケーブル長や配置によって波の位相が大きく変わってしまいます。このため、補正データをきちんとアナライザに「認識」させてやらなければなりません。


写真1 インピーダンスアナライザ

 

パラメータアナライザ+プローバ

 パラメータアナライザは、簡単な薄膜の電気的特性からトランジスタ素子のようなデバイス特性評価まで、主に半導体の電気特性(I−V特性、C−V特性)の評価をする場合に便利な装置です。このようなデバイスの測定をする際には、マイクロプローバと呼ばれる、精密微動機構を持つ微小端子を持つ装置が一緒に使われます。

 もちろんこの場合も、精密測定をする場合には、インピーダンスアナライザと同様に、測定系の補正を行なう必要があります。パラメータアナライザは写真2、プローバは写真3に示すような装置です。


写真2 パラメータアナライザ


写真3 マイクロプローバ

 特性評価の一例として、パラメータアナライザを使った比抵抗値ρの測定法を述べます。接触抵抗は接触電極の先端部分の半径に依存するため、探針を押しつける強さによってρは変わってしまいます。この問題を解決するために、通常は試料側に面積の定まった金属電極を形成し、そこにプローバー電極を接触させて測定を行います。試料に電極をつけない場合、下記のような測定を利用することもできます。

(1)ファン・デア・パウ法
 試料の四隅に微小電極(A,B,C,D)を取り付け、電極AからBに電流IABを流した時に電極CD間に生じる電位差をVDAとしたとき、

  RAB-CDVCDIAB
  RBC-DAVDAIBC

と定義します。ここで比抵抗値ρは

  ρ=(πt/ln 2)(RAB-CDRBC-DA)/2f

で与えられます。ここで、t は試料の厚さです。また、RAB-CDRBC-DAの測定値によって決まる補正値であり、特にRAB-CDRBC-DA (測定結果が方向依存性を持たなかった場合)のとき、f = 1となります。

(2) 4探針法
 この測定で使用する探針の様子は写真4を参照して下さい。写真では確認できませんが、赤い丸印の部分に一列に並んだ4本の探針があり、この部分を測定試料に接触させることによって測定します。 4探針法とは、十分に短い間隔 L で、等間隔に一直線上に並べた4本の短針(A,B,C,D )を試料に接触させ、外側の短針AからDに電流Iを流します。このときの中間の端子B−C間に生じる電位差V を測定する方法です。試料が L に比べて十分大きく、その厚さ d が十分に厚い場合、比抵抗値ρは

  ρ=2πL(VI)

 で与えられます。しかし、薄膜のように (正確にはdL の値)が十分に小さい場合、

  ρ=(π/ln 2)(VI ) d 〜 4.53d (VI )

となります。


写真4 4探針プローブ