マイナスイオン放出評価

著者: 戸田 喜丈、修士課程2年生 (2003年度)

1. どんな装置ですか? 何がわかりますか?

 細野・神谷研究室の大きなテーマの一つである12CaO・7Al2O3(C12A7)はその結晶構造中にナノメーターサイズの籠を持ち、その内部にマイナスイオンを包接します。当研究室ではこのC12A7の籠の中にO2-、O-、H-、e-といった通常では安定に存在させることが困難なマイナスイオンを包接させることに成功してきました。C12A7の応用例の一つとしてO-、H-、e-などのイオン源が考えられています。この装置はサンプルをイオン源とすることが可能で発せられたイオン種の評価とイオン電流の測定を行うことが出来ます(図1)。


図1 マイナスイオン評価装置

 

2. どんな原理で測定できるのですか?

 装置は四重極型質量分析計(QMS)の付いた真空チャンバーで、内部に設置したサンプルに対して数キロボルトの電圧印加と800℃までの加熱(図2)が可能です。


図2 サンプルの加熱

四重極質量分析計(QMS: Quadrupole Mass Spectrometer)は、その名前の由来通りマスフィルター(イオン種の選別を行う)部が四本の円柱状電極で構成されており、対角に位置する電極には正負逆の直流+交流の電圧がかけられています(図3)。この中を通過できるイオンは、交流の周波数に応じて安定に振動できる質量を持つイオンのみです。交流の周波数を変化させ、検出器のカウント数を測定することでスペクトルを得ることが出来ます。  通常QMSは真空中の残留ガスの分析に用いられており、残留ガスを熱電子照射でイオン化し、マスフィルター部へ送り込みます。


図3 QMSの動作原理図(マスフィルター部)