蛍光計 F-4500 (日立)

著者: 山口 誉滋、修士課程1年生 (2003年度)

1. どんな装置ですか? 何がわかりますか?

 物質に光を当てた時などに、違う色の光を発することを蛍光と呼びます(注)。この装置は、このような蛍光の分光スペクトルや励起スペクトルを測定する装置です (図1)。右側のPCで装置を制御します。

 この装置によって、蛍光体が光照射(励起光と呼びます)によってどのような波長の光を発しているかがわかります(部の高スペクトル)。逆に、発光波長を固定して、励起光の波長を変えて測定をすると、その物質がどの波長の光を照射したらよく光るのかがわかります(励起スペクトル)。また、蛍光の時間分解スペクトルもとることができるので、蛍光体の残光時間も測定することができます

 これらの情報がわかると、物質中で、どのように電子が動いて光を出すのか、詳しいメカニズムがわかります。その結果をもとに、より優れた材料の設計指針を作ることができるのです。

注:正確には、発光時間が短いものを蛍光、長いものを燐光と呼びます

図1. 蛍光計F4500

 

2. どんな原理で測定できるのですか?

 装置の基本原理は単純です。試料に光を当てて、でてくる光を分光器で単色光にわけ、その強度を測定します。

 この装置では、キセンランプから出てくる光を分光器でいろいろな波長に分解した光を試料に当てます。そうすると、蛍光を担う電子(希土類イオン由来のものが多い)はその光に励起されて、基底状態(エネルギーが一番低い状態)の準位から上のエネルギー準位へ移動します(図2の@)。多くの場合、その電子は光を発しない緩和過程を経て(図2のA)、少し低いエネルギーの状態に移ります。そして、光を発しながら基底状態に戻ります(図2のB)。そのため、一般に発光(蛍光)のエネルギーは励起光のエネルギーよりも小さくなります。

 蛍光はまた分光器で単色光に分解され、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー)という装置により、電気信号に変換されます。光電子増倍管を使うと、電気信号を非常に強く増幅することができますので、人間の目に見えないほど弱い光でも高い感度で精度の良い測定ができます。蛍光の波長に対して得られた電気信号強度から、蛍光スペクトルが分かります。

 

図2 蛍光のメカニズム