PLD(パルスレーザーアブレーション)製膜装置

著者: 武田 悠二郎、修士課程1年生(2003年度)

1. どんな装置ですか? 何がわかりますか?

 PLDとはPulsed Laser Depositionの略で、PVD法(物理気相蒸着法)の一種であり、薄膜を作製する装置です。ほぼ同一の装置がレーザーMBE法、レーザーアブレーション法と呼ばれることもあります。レーザーを1秒間に数回ターゲットに打ち付けて物質を蒸発させて基板まで飛ばし、堆積させる事で薄膜になります。

PLD装置の全体図

 

2. どんな原理で測定できるのですか?

  エネルギーの強いパルスレーザー(KrFエキシマ、波長:248nm)をチャンバー内の高密度に焼結したターゲットに照射し、瞬間的に昇華(アブレーション*)させます。昇華された物質(分子、原子、イオン、クラスタ、電子、光子等)はプルームというプラズマ状態で製膜室中の反応ガスと衝突しながら基板へ向かいます。基板まで到達した物質は基板上に落ち着くか再蒸発します。

 私たちは主に酸化物薄膜を作製しているため、チャンバー内はいったん高真空に引いて、その後、製膜中は酸素等の反応ガスで所定の圧力に制御しています。

*アブレーション:強力なレーザー光をターゲットに集光・照射した時に、レーザー光を吸収したターゲット表面で起こる瞬間的なはく離。

PLD法の原理図

3. PLDの特長

  我々が作製する薄膜は主に酸化物半導体で、膜厚は数ナノ〜数ミクロンです。基本的に酸化物はバンドギャップが広く融点が高いのですが、高エネルギーレーザー(エネルギー密度:1〜5J/cm2)を照射する事でほとんどのターゲットのアブレーションが可能です。

 

4. 使用例

 透明FETなど細野・神谷研究室におけるほとんどの薄膜はPLDによって成膜されています。