分光光度計 (VUV/UV/VIS/FTIR)

著者: 酒井 崇、学部4年生 (2003年度)

1. どんな装置ですか? 何がわかりますか?

 光が物質中を透過する割合を広い範囲の波長域で行うことで、ある物質が吸収する光の波長を調べることができます。このような吸収波長は物質に特有の値であることが多いため、物質中の電子の遷移エネルギーや分子の振動(回転)エネルギーを求めたり、イオン種や含有物の特定、定量ができます。また、反射測定を行うことで、反射率や屈折率、表面の吸着分子種なども調べることができます。粉末試料では、KBr粉末などに薄めたもので、拡散反射率測定も行えます。

 私たちが使っている装置は、測定可能な波長粋に応じて、真空紫外(VUV)、紫外−可視−近赤外(UV 、VIS、 NIR)と赤外(フーリエ変換型IR分光装置: FTIR)があります。VUV (Vacuum Ultraviolet Spectrophotometer)は深紫外域、 UV (Ultraviolet)は紫外域、 VIS (Visible)は可視域、 NIR(Near Infrared) は近赤外域、 FT-IR (Fourier-Transform Infrared Spectrophotometer)は赤外域、 の光学測定機器の略称であり、測定したい光の波長域別に使い分けています。 本研究室では VUVはJASCO製のVU-201M型真空紫外吸収発光分光器(波長域:135〜300 nm)、UV/VIS/NIRは日立製のU4000(200〜3000nm)、FT-IRはPerkinElmer製のSpectrumOne(7800〜100cm-1=1400〜100000nm)を使用しています。


UV/VIS/NIR分光計 U4000。右図は測定室を上から見たもの。入射光強度がゆらいでも精度の高い測定ができるように、参照光と透過光を同時に測っている。


FT-IR SpectrumOne


真空紫外分光計 VU-201M

2. どんな原理で測定できるのですか?

 FT-IR以外の基本的な透過測定の原理は、さまざまな波長の混じっている光源(白色光源)から出る光を回折分光器(スリットとグレーティング)を用いてひとつの波長の光だけを取り出し、それを物質に照射し透過した光子(透過光)の量を光電子増倍管(フォトマルチプライアー)と呼ばれる検出器で検出します。この結果を物質透過前の光子(参照光)の量と比べて、この物質がどの波長の光をどれくらい吸収するのかという結果(スペクトル)を得ることができます。
 しかし、深紫外領域の光を測定するVUVでは、特に波長が200nmよりも短くなると、光路中の酸素分子が紫外線を吸収してしまいます。そのため、光が通るところは常に窒素ガスを流したりポンプで引いたりする作業が必要であり、これにより酸素分子に邪魔されず物質本来の測定をすることができます。
 FT-IRでは回折分光器を用いず、その内部に大学受験の物理でよくでてきたマイケルソン干渉分光器が使用されています。これにより一つ一つの単色の光を取り出すことなくさまざまな波長の光の重なりの結果であるインターフェログラム(サイン波の和、縦軸は光の強度、横軸は干渉分光器中の光路差)を得て、コンピュータによりこれをフーリエ変換してスペクトルを導きます。ただし空気中に含まれる水分子や二酸化炭素は赤外線を吸収してしまうので赤外不活性な窒素ガスをFT-IR装置中の光が通るところに満たす必要があります。一度の測定は数秒と短い時間でできるので、何度も結果を積算させて精度の高い測定をしたりするのに適しています。マイケルソン干渉分光器は可動鏡の精度のため比較的波長の長い赤外域にしか応用できません。


スペクトルの例