Home
 研究内容
 研究トピックス  
 講義関連
 実験装置
 学会発表
 講演会のお知らせ
 メンバー紹介
 研究室行事
 OB&OG
 博士論文
 論文一覧
 研究室の生活
 論文発表会のお知らせ
 安全衛生マネジメント
  
 薄膜X線回析装置
<研究トピックス3> <研究トピックス2>   <研究トピックス1>
磁性酸化物スピンフィルターを活用した高効率スピン注入を実証
 我々の研究室の和田詠史君は、マグネタイト(Fe3O4)薄膜から半導体AlGaAs/GaAs量子井戸へスピン偏極電子を注入し、その際に生じる円偏光発光解析に基づいて、高いスピン注入効率(効率33%)を得ることに成功しました。また、そのメカニズムがFe3O4によるスピンフィルター効果であることを示しました。以下、本成果の概要を示します。
 磁性体から半導体へスピン偏極電子を高効率に注入する技術は、磁性体物理と半導体物理工学との境界領域に位置し、またスピントロニクス技術の根幹をなす重要な課題で、多くの研究者によって世界各国で取り組まれています。このような状況において、我々の研究室では、Fe3O4が持つ特異な電気的特徴(金属絶縁体転移)に着眼して研究を行っています。一般に、Fe3O4は120 K付近にVerwey転移と呼ばれる金属絶縁体転移を示すことが知られています。そのため、Fe3O4(ALGaAs/GaAs)接合構造においてFe3O4からALGaAs/GaAs量子井戸に電気を注入すると、120 Kよりも高温領域では、金属的Fe3O4のフェルミエネルギーでのスピン依存状態密度を反映したスピン偏極電子の注入が、120 Kよりも低温領域では、絶縁体的フェリ磁性Fe3O4トンネル障壁を介したスピン偏極電子の注入が、期待できます(図3(b)(c)参照)。このことは、Verwey転移温度以下において、絶縁体的フェリ磁性Fe3O4トンネル障壁がスピンフィルターとして機能することで大きなスピン注入効率を与える可能性を示唆しています。実際、我々は以下の通り、上記の予測に合致するFe3O4/(ALGaAs/GaAs)接合界面におけるスピン輸送現象を捉えることに成功しました。
図1

図1は、Fe3O4/(ALGaAs/GaAs)量子井戸接合表面のRHEEDパターンとGaAs(001), MgO(001)基板上に成長したFe3O4の電気抵抗の温度依存性を示しています。いずれの基板上に成長したFe3O4も120 K付近にVerwey転移に起因する電気抵抗のとびを示しています。
図2

図2は、面直磁場下において電子を量子井戸に注入した際に生じる発光(エレクトロルミネッセンス)の右回りおよび左回り円偏光成分スペクトルを示しています。右回りおよび左回り円偏光成分の明瞭な差が見られます。また、右図のように円偏光度は磁場とともに増大し、やがて飽和するという、Fe3O4の磁化曲線に対応した磁場依存性を示しています。このことから、円偏光発光がスピン偏極電子の注入に起因するものであることがわかります。
図3

図3は、円偏光度の温度依存性を示しています。120 K付近以下で円偏光度が急激に増大し始めます。このことは、Verwey転移に伴ってスピン注入効率が増大することを証明しており、Fe3O4がスピンフィルターの機能を果たすことで、大きなスピン注入効率が得られることを示しています。
 本研究成果は、米国物理学協会速報誌 Applied Physics Letters, Vol.96, (2010), P102510に掲載されました。
チタバリの強誘電性に関する論文が IOP Selectに選定される
 符徳勝静岡大学准教授、伊藤 満、腰原伸也による論文"Invariang Lattice Strain and polarization in BaTiO3-CaTiO3 Ferroelectric Alloys" (Journal of Physics, Condensed Matter, 2010)の論文が、Institute of Physics (IOP) の注目論文(IOP Select) として選定されました。IOP Selectは重要な発見やブレークスルー、高度な新規性、将来研究への重要なインパクトを与える論文として位置づけされています。
J. Phys. の論文の紹介がLab Talk (http://iopscience.iop.org/0953-8984/labtalk-article/42169)に出ています 
  
リラクサーに関する論文
 リラクサーに関する論文(PRL, 2009)がNPG Asia Materialsで紹介されました
強誘電体分野における謎の1つを解明へ
 我々のグループは符徳勝博士(現静岡大学特任准教授、前科学技術振興機構腰原非平衡ダイナミクスプロジェクト研究員)、腰原伸也東工大教授、山本直樹東工大准教授、および森茂生大阪府大教授と共同で、強誘電体材料のうち50年来の謎であったリラクサーの起源に関する重要な手掛かりをえることに成功しました。
図1 Pb(Mg1/3Nb2/3)O3 (PMN)の誘電率の温度変化, 典型的な強誘電体BaTiO3と比較した. 挿入図はナノサイズ強誘電体の集合体モデル(左上)とダイポールガラスモデル(左下)を示す.

約50年前に発見されたPb(Mg
1/3Nb2/3)O3 (PMN)は、誘電率が260 K付近で周波数変化に対し非常に大きな変化をすることが報告され、これに対する解釈として大きく分けて次の2つのモデルが提案されていました。図1に示すように、ナノサイズの強誘電体が寄せ集まったモデルと、電気双極子が空間的に分布するモデルが代表的なものです。我々は誘電率測定の意味を根本から見直し、透過型電子顕微鏡による構造観察実験とラマンスペクトル測定の結果を統合して解釈した結果、前者のナノ結晶モデルが正しいことを確認しました。
図2 D-Eループの温度変化, 電場による微分で定義される誘電率と比較している. B, C, Dは200 Kにおける周波数依存性と解析結果を示す.

図2はD-Eループとこれから導出される誘電率、200 KにおけるD-Eループと関連する解析を示しています。いずれもPMNがBaTiO3と同じく古典的強誘電相転移を示すことを示しています。特徴的なのは、分極ドメインの反射には通常より大きな電場が必要なことです。
図3 誘電率の測定電場依存性. 赤線はLCRメータによる測定値を示す.

図3は誘電率と測定電場の関係を示しています。測定電場が十分に大きければ、誘電率測定でもTcが210 K付近で観測されることがわかります。
図4 誘電率(A), 残留分極(B), ラマンスペクトル(C)およびソフトモード(D), TEM像(E), PNRとCORの分布(F), 想定されるドメイン構造(G)

図4はラマンスペクトル、誘電率、電子顕微鏡観察の結果をまとめています。解析結果は、PMNが210 K付近で強誘電ソフトモードの周波数がゼロとなる典型的な変位型強誘電体であることを示しています。さらに重要なのは、何故PMNが通常の強誘電体と異なるように見えるか、その理由が判明したことです。透過型電子顕微鏡では、極めて明瞭に高温から平均組成とは異なる化学的規則化領域(COR)が観察され、しかもこの大きさが5 nm以下であり、温度に対しても変化しないことも見いだしました。この領域は、組成(Mg:Nb = 1:1)が平均組成(Mg:Nb = 1:2)と異なるため、電気的には中性からずれて電場を生じます。この電場がマトリックスの強誘電体の領域の成長を阻害するため、個々の強誘電体ドメインのサイズが10〜20 nm程度にとどまることも判明しました。
図5 PMNの構造の温度依存性. 下図は各相の割合と構造モデルを示す

図5は、本研究結果をまとめて図示しています。結晶全体に分布するCORとその近傍に成長するナノサイズの強誘電ドメインの相関が顕著であり、PMNはナノサイズの相分離領域に付随して強誘電ドメインが成長する特異な系であるといえます。PMNは圧電デバイス材料の母物質となっており、本研究結果は今後の強誘電体、圧電体研究の進展に対して重要な指針を与えることが期待されます。
 本研究は "The Pb(Mg1/3Nb2/3O3 Relaxor: a Ferroelectric with Multiple Inhomogeneities" と題し、米国物理学会誌速報誌(Physical Review Letters)に掲載されました(11月)。