鋼材のせん断方向・軸方向における低サイクル疲労の関連

 

  近年,様々な制振部材が開発されているが,これらは変位依存型と速度依存型に大別することができる。このうち,変位依存型で鋼材を用いたものとしては,座屈補剛ブレースなどの軸部材と,せん断パネルなどのせん断部材の2種が挙げられる。
  座屈補剛ブレースでは,鋼素材が本来もつ低サイクル疲労特性やエネルギー吸収能力を極力発揮できるようなディテールが開発されているが,部材レベルでは,座屈,応力集中,さらには溶接による残留応力や材料変化の影響を無視し得ないため,素材における低サイクル疲労特性から部材の特性を直接予測することは困難である。よって実大部材レベルでの実験により性能を確認しており,既往の研究からは,ブレース部材が示す低サイクル疲労特性は,鋼素材に比較して10~15%に低下する結果が得られている。
  同様の議論をせん断パネルにおいて行う場合,部材レベルでの実験は数多くなされているが,素材レベルでの実験結果がほとんどなく,さらに制振部材で要求されるような大歪領域を含む実験結果については未だ報告されていない。座屈補剛ブレースと同様にせん断パネルにおいても座屈や溶接の影響が無視し得ないが,近年はせん断パネルの座屈をかなり遅らせたり,溶接の影響を極力小さくするような加工方法も提案されており,その有効性を確認するためにも素材レベルでの特性を知る必要がある。
  本研究では,せん断疲労特性の実験に用いる新たな試験体を提案し,これを用いて大歪領域(せん断歪0.16 rad)までのせん断方向載荷実験を行っている。さらにこの結果から,せん断方向と軸方向の低サイクル疲労特性の関連について評価しており,簡易な変換則によって軸方向歪を等価なせん断歪とすることで,これらを包括的に評価可能なことを確認した。