アクリル系粘弾性ダンパーの熱伝導・熱伝達を考慮した解析モデル化


 粘弾性体は振動エネルギーを熱エネルギーに変換する。温度依存性を持つ粘弾性ダンパーをモデル化する場合、温度上昇を精度良く再現する必要がある。笠井研究室ではすでに、分数微分を用いて広範囲な温度・振動数・振幅での挙動を精密に再現できるアクリル系粘弾性体の非線形モデルを構築している。しかし、このモデルは、地震のような比較的継続時間の短い外乱を対象としたものであり、風のように継続時間が長い外乱を対象としたものではない。継続時間が長い場合、粘弾性体内で発生した熱は鋼板へ熱伝導し、さらに鋼板から空気へと熱伝達するため、粘弾性体の中心では温度が高く、逆に端部では温度が低くなるなり、内部温度は分布を持ち歪も一様でなくなる。
 本研究では、継続時間が長い外乱が作用した場合における粘弾性ダンパーの特性を、分数微分および1次元の熱伝導解析を用いて高精度にシミュレートできる力学モデルを構築した。解析結果と実験結果は内部温度、履歴ともに精度良く一致した。
 さらに、3次元有限要素解析による粘弾性ダンパーの温度および貯蔵剛性K'dをシミュレートする手法を提案した。解析結果は温度、貯蔵剛性ともに実験と精度良く一致している。これにより、実験では得ることはできないダンパー内部の詳細な温度分布を把握することが可能となった。