Perkin-Elmer社製 示差走査熱量計(DSC) Pyris 1
目次
Pyris 1について
操作方法
キャリブレーション
サンプルパン
注意事項
Pyris 1 DSCは試料と基準物質との間に生じる温度差が0になるようにした時の,
両者に加えた単位時間当たりの熱エネルギーの入力差を測定する入力補償型 示差走査熱量計である.
Pyris 1 DSC (Perkin-Elmer)
1. 装置の立ち上げ
- パージガスを流す.
パージガスには窒素ガスやアルゴンガスを用いる
(試料が窒素と反応する場合にはアルゴンガスを用いるなど,適当なパージガスを選ぶこと).
二次側の圧力調整器の圧力が1.6 atm以上(1.6 atmが最適)になるようにする.
- 装置およびパソコンの電源を入れる.
- ディスプレイ上部にマウスのポインタを持っていく.
[Pyris Manager]が表示されるのでofflineになっているInstrumentボタンを押し,Pyris熱分析ソフトウェアを立ち上げる.
Instrumentボタンに装置の温度が表示されれば,装置とパソコンが接続できている.
Pyris Manager起動前
Pyris Manager起動後
2. 測定の準備
- 装置を開く.
注意:装置の開閉を行うときは装置の温度を確認すること
- 氷と水をIce Wataer Containerを入れる.
氷を入れてから30分置き,温度が平衡になるまで待つ.
- Pyris熱分析ソフトウェアのControl Panelから温度を設定し,Go To Temperatureボタンを押す.
- キャリブレーションをしていない場合にはキャリブレーションをする必要がある.
詳しくはキャリブレーション参照.
- パンをSample Holderに装置に入れる.
白金容器のフタを取り,パンを入れる.
向かって右側にリファレンスを,左側にサンプルを入れる.
パンの作製方法はサンプルパン参照
Sample Holder上面図
装置の開け方
まず温度表示部分が干渉しないように90度回転させる.黒いネジ部がストッパーになっている.
装置上部の取っ手を上に向けて回す.この状態でサンプルの出し入れをする.
装置下部のつまみを左に回す.
装置を持ちあげる.中にある金属の棒を立て,装置を固定する.
この状態で氷水を入れる.
3. プログラムの作成
プログラムおよび測定する試料の情報などは[Method Editer]を用いて行う.
- [Sample Info]タブを開き,測定する試料の情報を入れる.
Sample Infoタグ
Sample ID | サンプル名を入力する. |
Operator ID | 測定者名を入力する. |
Comment | コメントを入力する. |
Weight | サンプルの重量を入力する. |
Directory | 測定データの保存場所を入力する.Browseより選ぶ. |
File Name | 保存するファイル名を入力する. |
- [Initial State]タブを開き,実験の初期条件を入力する.

Initial Stateタブ
Temperature | 開始温度を入力する. |
Y Initial | Y軸の開始熱量を入力する. |
Set Purge Gas | パージガスの種類および流量を入力する. |
- [Program]タブを開き,測定プログラムを入力する.

Programタブ
Add a step : プログラムの最後に新しいステップを加える.
Insert a step : プログラムの途中にステップを挿入する.
Delete a step : 選択しているステップをプログラムから削除する.
プログラムのステップ
ステップ名 | プログラムに表示される英文 | 内容 |
Temperature Scan | Heat/Cool from X℃ to Y℃ at Z ℃/min | X℃からY℃までZ℃/minで昇温/冷却させる.
* 実際に入力する必要があるのはYとZのみ |
Isothermal | Hold for X min at Y ℃ | Y℃でX分保持する. |
- [End Condition]ボタンを押し,測定終了時の温度等を入力する.
測定プログラムはメニューの"Save Method As..."で保存,"Save Method"で上書き保存できる.また"Open Method"で保存したプログラムを開くことができる.
4. 測定開始
- Control PanelのStart/Stop Methodボタンを押す.
5. 測定終了
- 測定が終了したら装置の温度が30℃以下に下がるまで待つ.
- 装置を開き,中のサンプルを取りだす.
- Pyris Managerを終了させる場合には,メニューの"Exit"をクリックする.
正確な温度測定のために,DSCはキャリブレーションを行うべきである.
キャリブレーションは標準物質の転移温度の測定と装置の設定の2段階に分けられる.
標準物質の測定
温度キャリブレーションを行うためには,標準物質の転移点の温度を測定する必要がある.
マニュアルにはInとZnの2つのサンプルで行うとあるが,より正確を期すためにIn, Sn, Bi, Pb, ZnおよびLSOの6つの試料でキャリブレーションする.
また昇温速度も同様の理由で5 K/min, 10 K/min, 20 K/minの3つで行う.
それぞれの転移温度の文献値は,
物質 | Temperature / K |
In | 156.60 |
Sn | 231.93 |
Bi | 271.40 |
Pb | 327.469 |
Zn | 419.53 |
LSO | 578.28 |
である.またInの融解エントロピーの文献値は28.45 J/molである.
- Baseline補正を行う.
- 転移温度付近の温度を3回昇温させて,熱量を測る.
このプログラムはcalibrationファイルの中に保存してあるのでそれを使えば良い.
- 測定データから転移のOnset温度(Inの場合には転移エンタルピーも)を求める.
Onset温度の求め方は,
メミューのcalc. - Peak Areaをクリック → Onsetのチェックボックスをクリック
sinusoidalを選択 → 範囲を指定する.
- 3回の測定の平均値をとる.
- 行程1-3を6つの物質,3つの昇温速度で行う(計18回の測定).
- 同じ物質の5 K/min,10 K/min,20 K/minの3つのデータから直線近似する.
- 行程5で得た式から0 K/min,5 K/min,10 K/min,15 K/min,20 K/minの値を求める.
- 行程5-6を全物質で行う.
装置の設定
標準物質の測定から得たデータを基に,装置のキャリブレーションを行う.操作は主に[calibration]エディターで行う.
[calibration]エディターはメニューのView → calibrate をクリックするすることで起動できる.

[calibration]エディター Temperatureタブ

[calibration]エディター Heat Flowタブ

[calibration]エディター Furnaceタブ
- 現在の較正ファイルを全部消去する.
[calibration]エディターを起動 → メニューのRestor - Allをクリック
- 未較正のファイルを作る.
TemperatureタブとHeat FlowタブのExp. Onset(文献値)およびMeus. Onset(測定値)に文献値を入力する.
入力する物質はIn,Sn,Bi,Pb,Znの融点,LSOの転移点,Inの融解エントロピーである.
右側のUseのチェックボックスをクリックすること.
- Save and Applyを押す.その後必ずcloseボタンを押すこと.
- 再び[calibration]エディターを起動し,Meus. Onsetに[標準物質の測定]で得た値を入力する.
Save and Applyで上書き保存し,closeを押す.
- 炉の温度較正を行う.
DSCの測定準備をし,Sample Holderを空にする.
[calibration]エディターを起動してFurnaceタブを開き,温度を最低25℃最高600℃と入力する.
Begin Calibrationボタンを押し,OKを選択する.
炉の温度較正はおよそ20分で終わる.
終了後,SaveSave and Applyで上書き保存し,closeを押す.
DSC測定に使用する粉末試料,液体試料はパンに入れて測定する.
パンにはいろいろ種類があるが,通常アルミニウム製のものを使う.
アルミニウムは融点が615℃なので,600℃以上に加熱する測定では使用しないこと.
パンに試料を入れた後,フタをしてハンドプレスで封をする.
プレスする前にパンとフタの質量を測定しておくと,試料の質量を計算できるため良い.
ハンドプレス
- 使用するパンの融点以上まで温度を上げないこと.
アルミニウムパンの場合には600 ℃以上には加熱しないようにし,それ以上の温度で使用する際には白金パンを使用する.
- 実験後装置を開けるときは装置に表示される温度が30 ℃以下になるまで待つこと.
- 亜鉛は融解する際,アルミニウムと反応する.
そのため亜鉛をアルミニウムパンに入れて測定する場合には2回以上使用しないこと.