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研究内容紹介

阿竹・川路研究室では、材料の機能性発現機構にかかわる構造と物性の相関、とりわけ相転移現象に着目して、物性物理化学的立場から基礎的研究を行っている。 結晶中の物理的・化学的純度と微視的構造に基づき、誘電特性、磁気特性、電子・イオン伝導性、超伝導性、分子間相互作用などの特性を理解し、相転移機構を解明している。 調製条件を高度に制御した試料について、世界最高精度の断熱型熱量計による精密熱容量(比熱)測定をはじめ、誘電率および磁化率測定、放射光X線回折・中性子回折及び非弾性散乱実験、さらに種々の分光学的手法により結晶中の原子・分子運動の詳細や構造と物性の相関を明らかにすることを目指している。

  1. 誘電体結晶の相転移
  2. 相転移における粒子サイズ効果
  3. ガラス転移機構とダイナミクス
  4. ナノ細孔を有する金属錯体への分子吸蔵機構
  5. プロトン伝導体の動的挙動
  6. 極低温、強磁場下における熱容量
  7. 機能性材料における格子振動と相転移
  8. その他の研究テーマ

1. 誘電体結晶の相転移に関する物性物理化学的研究

種々の誘電体結晶における逐次相転移現象、なかでも(反)強誘電性、強弾性、圧電性、これらの性質をもたらす構造変化がナノスケールに抑制されたまま凍結することにより生じるリラクサー性、さらにはある自由度(分子の配向など)の周期が結晶の並進対称性と整合しないインコメンシュレート相の発現などに注目し、原子・分子運動と相転移機構の解明を目指した研究を行っている。物質の標準エンタルピー、エントロピー、ギブズエネルギーなどの熱力学諸関数の絶対値を決定するとともに、誘電率測定や分光学的手法を駆使して総合的な研究を展開している。

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2. 相転移における粒子サイズ効果

結晶粒のサイズを小さくしていくと、あるサイズ(臨界粒径)以下で物性が劇的に変化する粒子サイズ効果が現れる。金属微粒子における量子サイズ効果やペロブスカイト型強誘電体の微粒子効果は古くから知られているが、その臨界粒径は一般にナノからマイクロスケールである。しかし最近、本研究室ではこれらの現象とは一線を画する非常に巨大な臨界粒径を示す特異なサイズ効果をトリジマイト型化合物のCsZnPO4(CZP)において発見した。それは0.1ミリメートルの粒径以下で相転移が消失するというもので、これまでの粒子サイズ効果とは明らかに異なっている。このような巨大サイズ効果について、本研究室では精密構造解析と物性研究の両面からそのメカニズムを解明する研究を進めている。

CZPの偏光顕微鏡写真

CZPの偏光顕微鏡写真(ドメイン構造が見える)

CZPの熱容量において観測された巨大サイズ効果

CZPの熱容量において観測された巨大サイズ効果

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3. ガラス転移機構とダイナミクスの解明

熱容量は本来熱力学的平衡状態で定義される静的物性量であるが、ガラス転移などの緩和現象が関与すると周波数依存性(分散)が現れる。これを観測できる熱容量分光法を開発し、また誘電率との同時測定を可能として、種々の分子性液体をはじめ、液晶および高分子材料などのガラス形成物質に応用している。さらに赤外・ラマン分光法などによる実験や計算機シミュレーションを行い、異性体間の相違や分子間相互作用の点からその緩和機構を解明する研究を進めている。

ガラス転移における複素熱容量(左)および複素誘電率(右)(上が実部、下が虚部)

ガラス転移における複素熱容量(左)および複素誘電率(右)(上が実部、下が虚部)

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4. ナノ細孔を有する金属錯体への分子吸蔵機構の解明

ナノ細孔を有するジカルボン酸金属錯体は非常に多量の分子を吸蔵・脱離することができるため、分子ふるい、化学反応の場、触媒などの様々な分野で応用が期待されている。そこでジカルボン酸銅錯体など一連の有機金属錯体を合成し、熱力学的立場から分子吸蔵特性を調べるとともに、磁化率測定、粉末X線回折による構造解析、計算機シミュレーションなどを駆使して分子吸蔵機構の解明を目的とした総合的研究を展開している。

ナノ細孔を持つジカルボン酸

ナノ細孔を持つジカルボン酸

トルエン吸蔵量とホスト格子の構造相転移に起因する熱容量異常の関係

トルエン吸蔵量とホスト格子の構造相転移に起因する熱容量異常の関係

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5. プロトン伝導体の動的挙動に関する研究

現在、世界規模でエネルギー問題に関心が集まっている。それは、化石燃料の枯渇、排出ガスによる地球温暖化など負の面が主に目立っている。しかし、この問題を改善でき得る物質がプロトン伝導体である。プロトン伝導体は、来るべき水素社会のための(プロトン伝導)固体酸化物形燃料電池や水素センサーなど、幅広い応用が期待されている。本研究室では、未知の部分が多いプロトンの低温域での挙動・伝導率と熱容量との関係など構造やダイナミクスの解明を目指して基礎的研究を展開している。

プロトン伝導の概略

プロトン伝導の概略図

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6. 極低温、強磁場下における熱容量

物質は温度や磁場など環境を変化させることでさまざまな物性を示す。特に人が容易に到達できない極限状態では、さまざまな現象が観測されている。本研究室では希釈冷凍機および超伝導コイルを用いてmKオーダーの極低温、12Tの高磁場という複合極限状態を作りだし、機能性材料をはじめとするさまざまな物質の構造とその物性の相関に関する研究を行っている。

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7. 機能性材料における格子振動と相転移に関する物理化学的研究

ダイヤモンドおよびこれに比肩し得る物性が期待されているcBN、さらにグラファイトおよびhBNについて精密な熱物性測定値を得るとともに格子力学に基づき詳細な解析を進め、機能性との相関を明らかにしている。また酸化物超伝導体、有機超伝導体および関連化合物などについても、分子運動と相転移現象の詳細を解明するため、精密熱容量測定および高磁場中熱容量測定などにより、基礎的研究を行っている。

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8.その他の研究テーマ

他にも阿竹・川路研究室で扱っている研究テーマには以下のようなものがある。

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