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研究内容


川路研究室で取り扱っている研究について紹介します.

川路研究室では,材料の機能性発現機構にかかわる構造と物性の相関,とりわけ相転移現象に着目して, 物性物理化学的立場から基礎的研究を行っています.結晶中の物理的・化学的純度と微視的構造に基づき, 誘電特性,磁気特性,電子・イオン伝導性,超伝導性,分子間相互作用などの特性を理解し,相転移機構を解明しています. 調製条件を高度に制御した試料について,世界最高精度の断熱型熱量計による精密熱容量(比熱)測定をはじめ, 誘電率および磁化率測定,放射光X線回折・中性子回折及び非弾性散乱実験,さらに種々の分光学的手法により 結晶中の原子・分子運動の詳細や構造と物性の相関を明らかにすることを目指しています.




金属ガラス

数あるガラスの中でも新しく発見された金属ガラスは,これまでの結晶金属材料に比べ,応用上優れた物理的・化学的性質を有する機能性材料です.合金とガラスの両方の特性を含有しており,両者の性質を解明する新たな手がかりになりうる物質です.


リラクサーの相転移挙動

リラクサーとは誘電率がブロードなピークを持ち,また誘電率に周波数依存性が見られる物質です.リラクサーのこのような特性の起源とその相転移挙動について,転移のエントロピーを定量的に求められる熱容量を測定することにより研究をしています.


フラストレーション系の物理

フラストレーションの内在する磁性体とは,そのスピン系において最適化条件の競合を持つ物質を指します.このような系について特異な物性が多く報告されており,本研究では主に熱測定によってこのような系の物性を解析しています.


イオン液体

イオン液体とは融点が室温よりも低い塩の総称であり,高イオン導電性,不揮発性,化学的安定性などの特性を有しています.本研究室では,基礎研究の中でも特に知見が少ないとされている熱力学的性質の解明を目的とし,断熱型熱量計を用いてイオン液体の熱容量測定を行っています.


冷凍機を用いた極低温物性研究

物質は温度や磁場など環境を変化させることでさまざまな物性を示します.特に人が容易に到達できない極限状態では、さまざまな現象が観測されています.本研究室では希釈冷凍機および超伝導コイルを用いてmKオーダーの極低温,12Tの高磁場という複合極限状態を作りだし,機能性材料をはじめとするさまざまな物質の構造とその物性の相関に関する研究を行っています.


プロトン伝導体の動的挙動

現在,世界規模でエネルギー問題に関心が集まっています.それは,化石燃料の枯渇,排出ガスによる地球温暖化など負の面が主に目立っています.この問題を改善でき得る物質としてプロトン伝導体が挙げられます.プロトン伝導体は,来るべき水素社会のための(プロトン伝導)固体酸化物形燃料電池や水素センサーなど,幅広い応用が期待されています.本研究室では、未知の部分が多いプロトンの低温域での挙動・伝導率と熱容量との関係など構造やダイナミクスの解明を目指して基礎的研究を展開しています.


ナノ細孔を有する金属錯体への分子吸蔵機構の解明

ナノ細孔を有するジカルボン酸金属錯体は非常に多量の分子を吸蔵・脱離することができるため,分子ふるい,化学反応の場,触媒などの様々な分野で応用が期待されています.そこでジカルボン酸銅錯体など一連の有機金属錯体を合成し,熱力学的立場から分子吸蔵特性を調べるとともに,磁化率測定,粉末X線回折による構造解析,計算機シミュレーションなどを駆使して分子吸蔵機構の解明を目的とした総合的研究を展開しています.


機能性材料における格子振動と相転移に関する物理化学的研究

ダイヤモンドおよびこれに比肩し得る物性が期待されているcBN,さらにグラファイトおよびhBNについて精密な熱物性測定値を得るとともに格子力学に基づき詳細な解析を進め,機能性との相関を明らかにしてます.また酸化物超伝導体,有機超伝導体および関連化合物などについても,分子運動と相転移現象の詳細を解明するため,精密熱容量測定および高磁場中熱容量測定などにより,基礎的研究を行っています.


その他の研究

川路研究室では上記の内容以外にも様々な研究を行っています.

  • 新規熱電変換材料の合成と物性評価
  • 強相関電子系材料の低温熱物性
  • 相転移における粒子サイズ効果
  • フラーレン結晶における分子運動と相転移・ガラス転移機構
  • 高温酸化物超伝導体、有機超伝導体および関連化合物の超伝導機構など