セラミックスにおける強誘電相転移,磁気相転移などに代表される相転移現象は,
物質全体としての安定な状態が変化する巨視的な現象ですが,その起源は,
微視的なサイズのイオン・原子・分子の微視的性質から理解されるはずです.
しかし,多くの相転移現象は安定性を支配する複数の要因がせめぎあった結果生じるために,
その理解は深まってきているとはいえ,完全に理解するには至っていません.
特に,相転移点の近くでは,微視的なイオン・原子・分子のサイズでもなく,
巨視的なサイズでもない,その中間のナノメートルサイズの構造が重要な役割を果たすことが考えられます.
しかしその効果についての理解は決して十分とは言えず,
例えば,物質のサイズを次第に小さくしていった時,どれくらいのサイズで
どの様に相転移が消失していくのか,ナノメートルサイズのヘテロ構造を導入したときに
相転移はどのようになっていくかなど興味深い問題が数多く残されています.
特に,このような相転移が消失・出現する近傍では興味深い現象が現れてくることが期待されます.
私たちの研究室では,特にこのような相転移現象あるいはガラス転移現象に着目して,研究を進めています.
川路 均
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