一般にNaClのような無機塩は室温では固体として存在し、加熱すると高温で融解して液体になります(溶融塩)

イオン液体は融点が室温よりも低い溶融塩であり、嵩高い有機カチオン
(イミダゾリウム系, ピリジニウム系など)とアニオン(Tf2N-, PF6-, BF4-など)で構成されています。

これらは室温で液体であるにも関わらず高イオン導電性、不揮発性、化学的安定性などの興味深い特性を持つことから注目を集めており、現在多くの研究が行われています。

また安全面における利点から反応溶媒や電解質溶液の代替物などの新しい材料として実用化も期待されています。

しかし、それらの構造や物性は未だ解明されていない点が多く基礎的な研究が重要視されています。

特に熱力学的性質については融点などのデータは報告されていますが、それらの相転移機構に関する詳細な知見はあまり知られていません。

そのため本研究室ではイオン液体の熱力学的性質を調べることを目的としています。

これまでに断熱型熱量計を用いてイオン液体の結晶相、液相、過冷却液相およびガラス状態の熱容量測定を行い、室温以下でいくつかの相転移現象や結晶多形現象を観測しました。

それらの熱容量測定結果より、融解現象を中心に解析を行っており、純物質の融点、融解エンタルピーなどの融解の熱力学量を決定することで相転移挙動についての考察を行っています。

そしてこれらの熱力学量を系統的に比較することにより、イオン液体のアルキル鎖長効果に関する熱力学的性質についての解析を進めています。