東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所
鎌田研究室

研究内容 実験装置

研究内容(研究紹介動画(9分程度)は こちらです)

 鎌田研究室は、2023年4月からスタートした研究室です。 “新しい触媒材料や化学反応の開発を通して持続可能なカーボンニュートラル社会の構築に貢献すること” を目標としています。

 均一系触媒の研究(アニオン性金属酸化物クラスター分子であるポリオキソメタレート)で得た無機合成技術を生かし、結晶性金属酸化物を基軸とした新しい固体触媒の科学に挑戦しています。特に、石油などの化石資源に大きく依存した現在の化学プロセスから、天然ガスやバイオマスなどの多様な天然炭素資源から様々な化学品(モノマー・燃料など)を低エネルギーで作りCO2排出を大幅に削減できる触媒技術の開発を目指し、以下のような研究に取り組んでいます。

新しい金属酸化物のナノ構造制御手法の開発

ナノサイズに制御された構造は、バルク化合物にはない優れた物性・機能を示します。中でも、望みの組成や結晶構造をもつ金属酸化物を狙ってつくる新しいナノ構造制御手法の開発に取り組んでいます。

 アミノ酸の一つであるアスパラギン酸を金属分散剤として用いることで、多様な元素組成をもつ結晶性複合酸化物ナノ粒子を合成することに成功しました。 この手法を用いることで優れた酸化触媒作用を示す多様な六方晶ペロブスカイト酸化物、金属リン酸塩、ムルドカイト型酸化物等の合成を達成しました(ACS Appl. Mater. Interfaces 2018など)。 また、低結晶性層状マンガン前駆体の低温結晶化という極めてシンプルな手法により、テンプレートフリーでメソポーラスβ-MnO2やOMS-1ナノ粒子の合成を達成しました。 反応条件の制御により、細孔・粒子形態の制御が可能であり、構造に由来する酸化触媒作用を示します(ACS Appl. Mater. Interfaces 2020;J. Am. Chem. Soc. 2022など)。

分子状酸素を酸化剤とした酸化触媒の創製

選択酸化反応は、工業有機化学プロセスの約3割をしめる基幹反応の一つです。中でも、環境にやさしい酸化剤を用いた難易度の高い選択酸化反応を可能とする触媒の開発に取り組んでいます。

 特異な活性点構造をもつ結晶性金属酸化物に着目し、O2のみを酸化剤とした選択酸化反応の開発を行っています。 理論計算グループ(東工大 大場グループ)との共同研究により、金属酸化物中の酸素原子の空孔形成エネルギーと反応性との関係を明らかにし、異常原子価金属をもつ六方晶ペロブスカイトや酸素欠陥形成エネルギーの低いβ型二酸化マンガンの有効性を明らかにしました。これら触媒を用いることで、アルカンの不活性C–H結合・スルフィドの酸化・バイオマス由来の5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)からのプラスチックモノマー合成・ワンポット合成などの高難度選択酸化反応を達成しました(J. Am. Chem. Soc. 2019など)。

元素複合化による触媒の高機能化

固体中の異なる元素の複合効果により、単純酸化物や均一系触媒のみでは達成し得ない触媒性能の発現が期待されます。隣接する異なる性質の活性点(酸化・還元・酸・塩基)上で複数の分子が協奏的に活性化されるような複合触媒の開発にも取り組んでいます。

 ナノロッド状に形態制御したリン酸セリウムは固体表面上に均質かつ隣接したルイス酸-塩基点をもち、この触媒がバイオマス由来の5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)とアルコールの反応からアセタール体のみを与えるという従来の酸塩基触媒とは異なる選択性を示すことを初めて見いだしました(Chem. Sci. 2017)。また、高表面積化したチタン酸ストロンチウムナノ粒子も酸塩基協奏触媒として機能し、有用有機化合物の高効率合成に有効であることを示しました( ACS Appl. Mater. Interfaces 2023)。 さらに、金属に酸化還元能を付与することで高難度なメタンの選択的変換反応も達成しました(Catal. Sci. Technol. 2021; Catal. Sci. Technol. 2023)。 塩基点と酸化還元能をもつムルドカイトMg6MnO8ナノ粒子上でのプロトン共役電子移動によるC–H結合活性化の可能性を初めて実証し、従来系よりも温和な条件で酸化反応が進行することを見いだしました(ACS Appl. Mater. Interfaces 2022)。

 これらオリジナルな物質合成技術は触媒応用のみならず、広範な機能応用へと展開可能です。 実際に、異分野のエキスパートである先生方とコラボレーションすることで“電場下での低温メタン変換”(早大 関根先生・小河先生九大 松村先生・山本先生Chem. Commun. 2019)や“電極触媒によるアルカリ水電解”(東工大 山口先生・菅原先生ACS Appl Energy Mater. 2019ACS Appl. Energy Mater. 2021ACS Appl. Energy Mater. 2023)など新たなイノベーションの創出に繋がっています。

実験装置

  研究室で所有する下記の実験装置に加えて、OFCや共同研究、共同利用研究などを通して、多数の測定装置の使用が可能です。

    触媒合成

  • エバポレーター (EYELA N-1110型, etc.)
  • ミニスプレードライヤー (BUCHI Mini Spray Dryer B-290)
  • 水熱合成反応装置
  • 遊星型ボールミル (FRITSCH P-6)
  • 凍結乾燥機 (EYELA FD-1000)
  • 卓上多本架遠心機 (TOMY LCX-100)
  • 電気炉(NITTO NHK-170AF, AS ONE ROP-001P, etc.)
  • pHメーター(TOA DKK HM-30R)
  • 超音波ホモジナイザー (Yamato LUH150)
  • 触媒反応

  • 液相反応装置 (TECHNO APPLICATIONS/ALHB-80 & DTC-200HZ-3000, SIBATA CP-1000型, AS ONE ブロックバスシェーカーMyBL-100CS)
  • 気相反応装置 (流通系反応装置、パルス反応装置)
  • ポテンショ/ガルバノスタット (Bio-Logic Science Instruments SP-150e)
  • ガスクロマトグラフ (Shimadzu GC 8A/2025, GL Sciences GC 3210 etc.)
  • 溶出位置制御 自動設定中圧分取液体クロマトグラフ (山善株式会社 EPCLC-AI-580S)
  • ガラスチューブオーブン (BUCHI Glass Oven B-585 Kugelrohr)
  • キャラクタリゼーション

  • X線回折装置 (Rigaku MiniFlex600)
  • エネルギー分散型蛍光X線分析装置 (Rigaku NEX-DE)
  • 触媒分析装置 (Microtrac MRB BELCAT II)
  • フーリエ変換赤外分光光度計 (Shimadzu IRSpirit/IRTracer-100)
  • 紫外可視分光光度計 UV-2600 (Shimadzu UV-2600)
  • 示差熱・熱重量(TG/DTA)同時測定装置(Shimadzu DTG-60H)
  • 自動比表面積/細孔分布測定装置 (Micromeritics/Shimadzu TristarII Plus 3020)
  • 自動滴定システム・装置 (METTLER TOLEDO EasyPlus)
  • 触媒評価用閉鎖循環・流通反応装置 (幕張理化学硝子製作所)