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第24回フロンティア材料研究所講演会(紅林 秀和 博士)

開催日時 2016年12月26日 10:30~12:30
開催場所 元素戦略研究センター(S8棟)1F レクチャーホール
主催フロンティア材料研究所
連絡先細野秀雄 教授 (内線:5009)

プログラム等

第24回フロンティア材料研究所講演会(pdf)

講師紅林 秀和 博士
    (ロンドン大学 University College London(UCL)電気電子工学科&ナノテクセンター Lecturer)

紅林博士は、名工大(学部)、東北大(修士)を経て、2009年にケンブリッジ大で学位を取得し、2013年からUCLでスピン物理の研究室を主催しています。この間、JSTさきがけ研究員を務め、多くの成果を挙げました。海外の主要大学で独立研究室を主催し、活発な研究を展開している若手研究者です。「海外での研究:方法と現実」についても触れて頂く予定です。是非 ご参集ください。

講演テーマ: 「反転対称性が破れた固体中のスピン軌道相互作用と磁化制御」

スピン軌道相互作用(SOI)はその言葉の通り、電子の持つ二つの角運動量(スピン角運動量と軌道角運動量)の相互作用である。最近の固体物理研究では、このSOIが誘起する新しい物性が盛んに研究されており、トポロジカル量子相の出現やDzyaloshinskii–守谷相互作用を介した磁気スキルミオン相などがその一例になる。

本発表では、SOIが生む新しい電流スピン変換輸送現象とそれを用いた磁化制御について紹介したい。固体中のSOIハミルトニアンは電子スピンと波数を含むためこの二つの物理量を結合させているが、固体中の電流がフェルミ面近傍の電子の波数シフトにより決まるため、電流とスピンを相互変換することができる。つまり、SOIは電流を用いてスピンを励起したり、逆にスピンを用いて電流を駆動させる機能を持つ。これら機能を決定するのがSOIハミルトニアンであり、その対称性や大きさを結晶構造、構成元素そして最先端のナノテクノロジー技術(薄膜制御技術)で制御することが、電流スピン変換を有限化・顕著化させるアプローチそして課題である。さらに本電流スピン変換機構で生成した伝導電子のスピン偏極を使えば、磁性体中の磁化にトルクを与え、その方向を電流により制御できる。この現象は(スピンホール効果から生まれるトルクと併せて)”spin-orbit torques”と総称され、現在スピントロニクス分野で盛んに研究されている。

発表では、我々の実験結果を中心としてspin-orbit torquesの基本概念、測定技術そして最近の発展を紹介し、スピントロニクス分野外の方々にできるだけ有益なものにする予定である。

--関連論文--
[1] A. Chernyshov et al., Nature Phys., 5 656 (2009).
[2] D. Fang et al., Nature Nanotech. 9 211 (2011).
[3] H. Kurebayashi et al., Nature Nanotech, 9 211 (2014).
[4] T. Skinner et al., Nature Comm. 6 6730 (2015).
[5] C. Ciccarelli et al., Nature Phys. 12 855 (2016).
[6] 日本語の解説論文として、 紅林秀和 「スピン軌道相互作用に起因した新しいスピントルクの最近の発展」固体物理 No.11 (通巻597号) 特集号 スピントロニクスの新展開―スピン変換現象を中心に.

 

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