トップページ » 過去のプレスリリース » 過去のプレスリリース(2019) » 「エネルギーがゼロ」の束縛状態を観測
― マヨラナ粒子による次世代量子計算への第一歩 ―(笹川崇男准教授)
「エネルギーがゼロ」の束縛状態を観測
― マヨラナ粒子による次世代量子計算への第一歩 ―(笹川崇男准教授)

東京工業大学プレスリリース 2019年06月18日

 理化学研究所(理研) 創発物性科学研究センター 創発物性計測研究チームの町田理研究員、花栗哲郎チームリーダー、東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の笹川崇男准教授、東京大学 大学院工学系研究科物理工学専攻の為ヶ井強准教授らの共同研究グループは、トポロジカル超伝導体FeTe0.6Se0.4(Fe:鉄、Te:テルル、Se:セレン)の量子渦において、マヨラナ粒子の特徴であるゼロエネルギー束縛状態(ZBS)の観測に成功しました。 

 本研究成果は、次世代の量子コンピュータの実現に向けたマヨラナ粒子の検出と制御法の基盤になると期待できます。 マヨラナ粒子は電荷を持たず、エネルギーが厳密にゼロの奇妙な粒子で、トポロジカル超伝導体の端部や超伝導電流の渦である量子渦に局在すると考えられています。マヨラナ粒子はノイズに強い次世代量子計算の基本要素として期待されており、マヨラナ粒子の実験的検証が試みられてきました。しかし、これまでの測定ではエネルギー分解能が不十分で、決定的な証拠が得られていませんでした。
今回、共同研究グループは、これまでにない高いエネルギー分解能(20 µeV)を実現するために、100 mK以下の超低温で動作する走査型トンネル顕微鏡(STM)[用語5]を新たに開発し、FeTe0.6Se0.4の量子渦近傍の状態を詳細に調べました。その結果、エネルギーがゼロの束縛状態の観測に成功しました。この状態は、通常の電子では説明することができず、量子渦に局在したマヨラナ粒子由来であることを強く示唆しています。 

 本研究は、英国の科学雑誌『Nature Materials』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(6月17日付け:日本時間6月18日)に掲載されます。 

 詳細は、東工大ニュースをご覧ください。

 

 

笹川研究室



ページトップへ