鉄系超電導体-送電線応用に光(細野秀雄教授)
日刊工業新聞 2011年08月03日 朝刊19面他
細野秀雄教授らは、国際超電導産業技術研究センター超電導工学研究所と共同で、鉄系超電導体を送電ケーブル用の線材や超電導マグネットなどに応用できる可能性を初めて見出した。
鉄系超電導体は2008年に同教授らが発見した新型の超電導物質。これまで結晶粒界の詳しい特性が分からず、現在普及している銅酸化物超電導体に代わる応用の可能性は言及されてこなかった。
母体となる物質が絶縁体である銅酸化物超電導体に比べ、鉄系超電導体は母体となる物質が金属であるため、優れた結晶粒界の性質を持ちやすい。
今回発表された研究により、鉄系超電導体が銅系をしのぐ臨界電流密度を持つことが明らかになり、送電ケーブル用の線材を従来の銅酸化物系よりも安価に製造できる可能性を開いた。
鉄系伝導体の転移温度は最高でも55K(Kは、絶対温度、0Kはマイナス273度)とまだ銅酸化物系には及ばないが、高磁場で使える利点があり、線材の他、特に低温で強い磁場を発生する磁気共鳴断層撮影装置(MRI)に用いる超電導マグネットなどに応用できるとみている。
本成果は、8月3日(現地(ロンドン):8月2日)に「Nature Communications」に掲載される。
その他詳細は、東工大HP「最近の研究成果」および国際超電導産業技術研究センター(ISTEC)との共同発表を参照。
同様の記事が化学工業日報、日経産業新聞2紙でも掲載された。
細野・神谷・平松研究室