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低温・低圧でアンモニア製造が可能な新触媒を開発 ― エネルギーリターン280%増で「グリーンアンモニア」を実現 ―(原亨和教授)

東工大ニュース 2025年01月24日

東京科学大学(Science Tokyo)総合研究院 フロンティア材料研究所の原亨和教授らは、従来のどの触媒よりも低温・低圧でアンモニアを製造し、高いエネルギーリターンを実現する新触媒「ヒドリド鉄触媒」を開発しました。 

触媒を介して水素と窒素からアンモニアを製造するハーバー・ボッシュ(HB)プロセスは、窒素肥料を大量製造することで、人類の7割以上の生命を支えてきました。現在、食糧生産や自然エネルギー利用の観点から、HBプロセスの触媒性能の飛躍的向上を目指した多くの研究開発が進んでいます。しかし、アンモニア生産性で100年以上も前に設計された触媒を上回ることはできていませんでした。 

このような背景の下、本研究では従来の担持触媒構造とは全く異なる新構造のデザインにより、金属鉄粒子の上にアルミニウムヒドリを載せたヒドリド鉄触媒が生まれました。このヒドリド鉄触媒は、アンモニア製造中にアルミを加えた赤錆から自動的に生成し、これまでのどの触媒よりも低温・低圧で多くのアンモニアを製造できます。また、ヒドリド鉄触媒は50℃の低温からアンモニアを製造すること、そして、この触媒を既存のアンモニア製造工場で使うと、エネルギーリターンを280%以上増幅できることが確認されました。このような異次元の触媒性能をもたらすメカニズムとして、アルミニウムヒドリドが鉄粒子に強く電子を与えることで、アンモニアを高速で合成する領域が大幅に増加していることも分かりました。 

この研究成果は、食料品の低価格化や、温室効果ガスを削減した持続的社会の実現に大きく貢献することが期待されます。本研究成果は科学全般のハイエンドジャーナル「Advanced Science(Wiley)」オンライン速報版に1月23日(現地時間)に掲載されました。 

詳細は、Science Tokyoニュースをご覧ください。

本研究成果の関連記事が掲載されました。
・日刊工業新聞 2025年1月27日付 朝刊21面
・化学工業日報 2025年2月19日 朝刊3面
 

【論文情報】

掲載誌   : Advanced Science
論文タイトル: Ammonia Synthesis over An Iron Catalyst with An Inverse Structure
著者    : 服部 真史(Masashi Hattori)、宮下 健人(Kento Miyashita)、長澤 侑樹(Yuki Nagasawa)、鈴木 涼(Ryo Suzuki)、原 亨和(Michikazu Hara)
DOI     : 10.1002/advs.202410313

 

原・石川研究室



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