第197回 フロンティア材料研究所学術講演会(石渡晋太郎 教授)
開催日時 | 2025年07月03日 14:00 –15:30 |
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開催場所 | 東京科学大学すずかけ台キャンパス J1-809(地図㉘) |
主催 | 東京科学大学 総合研究院 フロンティア材料研究所 |
連絡先 | 東研究室 東正樹(5315) |
プログラム等
講師: 石渡 晋太郎 (大阪大学大学院基礎工学研究科)
演題: 計算・情報科学を活用した準安定強相関物質の開拓
概要:
高圧合成によって得られる準安定な強相関物質は、高温超伝導を示す水銀系銅酸化物やトポロジカルらせん磁性を示すペロブスカイト型鉄酸化物のように、革新的な電子機能を発現します。しかしながら、こうした物質の高圧合成は、研究者の経験と直感に頼る非効率なプロセスであり、計算科学や情報科学の活用も進んでいませんでした。この要因としては、準安定な物質の探索空間が広大で合成経路が単純でないために、第一原理計算による網羅的探索が困難であること、また常圧安定相と比べて既知のサンプル数が少なく、データベースに基づく記述子の抽出が困難であることなどが挙げられます。そこで計算・情報科学を活用した効率的な高圧合成を進めるには、人間の知見に基づいたモデル化や探索空間の絞込みを行うことが重要になります。
本セミナーでは、はじめに結晶構造や外場の対称性に基づいた従来的な機能性物質開拓の例を紹介し、後半に網羅的第一原理計算による新たなペロブスカイト型遷移金属酸化物の開拓や(図1)、機械学習による準安定強相関酸化物の高圧合成に関わる記述子の提案について紹介します。
図1:DFT計算に基づくらせん磁性候補物質(Ca,Ba)FeO3-dの合成経路の可視化(M. Onose, S. I. et al., JACS 147, 8260 (2025)).